放射線取扱主任者試験対策(物理化学生物)ブログ

第1種放射線取扱主任者です。試験勉強を始めたばかりの方のとっかかりになるような、ある程度勉強を進めた方の見返しとなるようなブログを目指しています。

α線の飛程について[過去問解説有]

α線の飛程について記載します。

 

試験に臨む上で、α線の飛程を求める式を2通り覚えておきましょう。

ほぼ毎年出題される式です。

 

①α線の空気中の飛程を求める式

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R:α線の飛程(α線) 

E:MeV単位のα線のエネルギー

 

②ある物質中のα線の飛程が判明しているときに他の物質中を通過するα線の飛程を求める

この式をブラッグ・クレーマン則と呼びます。

これは重荷電粒子の飛程は物質の密度に反比例し、原子量に比例するという経験則から算出されている式です。

f:id:hatomugikun:20190908214846p:plain
よって

f:id:hatomugikun:20190908214945p:plain
R:算出するα線の飛程

R0:判明しているα線の飛程

ρ:飛程を算出するα線が通過する物質の密度

ρ0:飛程が判明しているα線が通過する物質の密度

A:飛程を算出するα線が通過する物質の質量数

A0:飛程が判明しているα線が通過する物質の質量数

 

過去問

<平成23年度物理科目より> 

5.5MeVα線のシリコン(A=28)における飛程をR1[mg・cm^-2]、金(A=197)における飛程をR2[mg・cm^-2]としたとき、R2/R1の値として最も近いものは次のうちどれか。

(1)0.8 (2)1.0 (3)1.5 (4)2.0 (5)2.7

<解説>

ブラッグ・グレーマン則の式を変形して与えられた数値を代入します。

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よって

R2/R1=(197/28)^0.5=2.7

 となり、答えは(5)です。

 

関連としてβ線の飛程を算出する式も覚えておきましょう。

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光核反応について

光核反応について説明します。

 

試験では「正しいものの組み合わせはどれか」という問いで光核反応の性質が組み合わせの選択肢に上がっていることが多いです。

 

光核反応とは、高エネルギーのγ線原子核に入射すると原子核より、陽子・中性子α線等が放出される現象です。

光核反応は吸熱反応に分類されます。

 

光核反応が発生する条件として、入射するγ線のエネルギーが原子核結合エネルギー以上である必要があります。

 

ここで、原子核の結合エネルギーについて説明します。

陽子・中性子は相互作用し原子核になります。

その際、(陽子数量×質量+中性子数量×質量)の質量に対し、結合エネルギーを質量に変換した分だけ軽くなります。この軽くなる現象を質量欠損と呼びます。

結合エネルギーを式として表すと以下の様になります。

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Z:原子核内の陽子数量

Mp:陽子の質量

N:原子核内の中性子

Mn:中性子の質量

 

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荷電粒子の阻止能について

荷電粒子の阻止能について記載します。

 

荷電粒子が物質との相互作用でエネルギーを失う現象には以下の2通りがあります。

①荷電粒子が物質中の電子にエネルギーを与え、励起や電離作用でエネルギーを失います。この失うエネルギーを衝突阻止能と呼びます。衝突阻止能を物質の密度で割った値を質量衝突阻止能と呼びます。

②制動放射によりエネルギーを失います。制動放射により失うエネルギーを放射阻止能と呼びます。放射阻止能を物質の密度で割った値を質量放射阻止能と呼びます。

又、

・全阻止能=衝突阻止能放射阻止能

・質量阻止能=質量衝突阻止能質量放射阻止能

となります。

 

重荷電粒子(α線、陽子線等)の阻止能について

重荷電粒子は電子と比較し大きいため、通常物質中を直線に進みます。又、制動放射は無視することが出来ます。制動放射は、粒子の質量が大きい場合激減します。

よって、重荷電粒子は物質中の電子との相互作用による衝突阻止能のみ考慮すれば良いことが分かります。

全阻止能=衝突阻止能、質量阻止能=質量衝突阻止能

※とても少ない確率で重荷電粒子と原子核が衝突し、散乱粒子が大きく曲げられることがあります。これを、ラザフォード散乱と呼びます。

 

〇重荷電粒子のブラッグ曲線について

重荷電粒子は速度の2乗に反比例して大きな抵抗を受けるため、速度が遅くなってくるとある一点で急激にエネルギーを失います。その、エネルギーの損失曲線をブラッグピークと呼びます。

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:電子  :重荷電粒子 :原子核

 

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