放射線取扱主任者試験対策(物理化学生物)ブログ

第1種放射線取扱主任者です。試験勉強を始めたばかりの方のとっかかりになるような、ある程度勉強を進めた方の見返しとなるようなブログを目指しています。

中性子の弾性散乱について[過去問解説有]

中性子の弾性散乱について記載します。

 

中性子の弾性散乱では、中性子が原子核と衝突した時の

・原子核の反跳エネルギー

を求める問題が良く出題されます。

 

原子核の反跳エネルギーを求めるための公式を覚えておきましょう。

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式中の記号の意味は以下の図を参照ください。

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原子核の反跳エネルギーが最大になるケースを理解しておきましょう。

中性子の散乱角度について

中性子の散乱する角度φが180°になったとき原子核の反跳エネルギーは最大になります。式中のcosφに180を代入します。

原子核の質量数について

中性子の質量数が1であることから、原子核の質量数も1のとき原子核の反跳エネルギーは最大になります。すなわち、中性子が陽子に衝突したときです。これは、反跳エネルギーの式よりわかります。

 

原子核の反跳エネルギーを使う過去問を解説します。

<平成29年度物理23問>

エネルギーE0の中性子の弾性散乱により反跳される16O原子核の最大エネルギーはE0の何倍となるか、最も近い値を選べ。

1)0.89 2)0.75 3)0.64 4)0.36 5)0.22

[解説]

原子核の反跳エネルギーはφ=180°(cos180°=-1)の時に最大となります。

中性子の質量m=1、16Oの質量M=16を反跳エネルギーを求める式に代入するといかのようになります。

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これを計算してE'=0.22E0となります。

よって、正解は5)0.22となります。

 

関連としてγ壊変の反跳エネルギー、コンプトン散乱についても理解しておきましょう。↓

hatomugikun.hatenablog.com