放射線取扱主任者試験対策(物理化学生物)ブログ

第1種放射線取扱主任者です。試験勉強を始めたばかりの方のとっかかりになるような、ある程度勉強を進めた方の見返しとなるようなブログを目指しています。

溶媒抽出法[過去問解説有]

溶媒抽出法について記載します。

 

溶媒抽出法とは水相中にある放射性核種を有機溶媒によって取り出す方法です。

 

絵として内容理解してしまいましょう。

 

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【過去問平成22年度化学】

100mLの水相中にあるラジオアイソトープ(RI)を100mLの有機相に溶媒抽出すると90%が抽出された。水相に残ったRIをもう一度新たな100mLの有機相で溶媒抽出すると、2回分合わせて何%のRIが有機相に抽出されるか。最も近い値は次のうちどれか。

(1)91 (2)92 (3)94 (4)96 (5)99

 

【解説】

1回目の抽出では90%のRIが取り出されているので残りのRIは10%。

その残り10%の内の90%が抽出されるから、2回の抽出により残ったRIは1%。

よって、有機相に抽出されたRIは99%となる。

答えは(5)99

放射平衡について<過去問解説有>

放射平衡について説明します。

 

放射平衡とは、

親核種の半減期が娘核種の半減期より長い場合に親核種、娘核種が同時に存在するため放射能が釣り合う状態のことを言います。

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上記放射平衡には2種類のパターンがあります。

 

一つ目:過渡平衡(かとへいこう)

親核種の半減期が娘核種の10倍以上の時、成り立ちます。

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二つ目:永続平衡(えいぞくへいこう)

親各種の半減期は娘核種の1000倍以上(すごく長い!)の時、成り立ちます。

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<過去問(平成23年度化学)>

238Uを234g含む試料中の222Rnの放射能[Bq]として、最も近い値は次のうちどれか。

ただし、この試料中のウラン系列核種は永続平衡にあり、238U,1gの放射能は1.2×10^4[Bq]である。

<解説>

親核種(238U)と娘核種(222Rn)が永続平衡となるため

放射能=N1×λ1=N2×λ2

よって、N2×λ2=1.2×10^4×234=2.8×10^6[Bq]

※N1、N2:親と娘の放射線数

 λ1、λ2:親と娘の崩壊定数

 

チェルノブイリ 石棺とシェルター

チェルノブイリ事故とは1986年にチェルノブイリ原発4号炉が爆発し広島型原爆の何倍もの放射性物質が放出された事件です。

 

石棺

チェルノブイリの話題では「石棺(せっかん、せきかん)」という言葉が良く使われると思います。

この石棺とは一体どういうものであるのか簡単に記載します。

 

放射性物質の拡散を防ぐために事故当時、石棺という手法がとられました。

石棺とは下の図のように爆発した4号炉をコンクリートで覆ったものです。

 

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事故直後のチェルノブイリ原発4号機

 

シェルター

爆発したチェルノブイリ4号機を丸ごと覆う3万6千トンにも及ぶシェルターが造られました。

シェルターで石棺された4号機を覆うことにより放射性物質の拡散を防ぎます。

2023年までにシェルター内で石棺を解体し、溶解した核燃料の除去を始める計画です。

シェルターには下の図のようにレールが取り付けられており、5日間かけてシェルターを動かし4号機を覆いました。

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試験勉強をするにあたり、実際に起きた事故等のニュースも頭に入れて広い知識を習得する意識を持つことオススメします。